シュレーディンガーといえば…

忘れられないのは「生命とは何か」。
A・ケストラーの「機械の中の幽霊」とならんで、人生で最も強く影響を受けた書物だ。
前者は生命活動の本質について、後者は生命の本質から精神活動の本質にまで論及したものだが、とにかく切り口の斬新さで群を抜いた、傑作中の傑作だ。


生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波新書 青版) 機械の中の幽霊 (ちくま学芸文庫)


私はこの両書から多大な影響を受けているわけだが、「機械の中の幽霊」からはあらゆる物事を考える際の基本となるフレームを得た。日々仕事をこなす中、プロジェクトの工程管理でも、障害対応の場面でも、そこから得られた発想法は様々な形で生かされている。


「生命とは何か」は、文章を書くということについての究極の理想、ある種の到達点として私の頭の中に刻まれている。最先端の科学者でなければ思いつけないような大胆かつ斬新な着眼に立脚しつつ、一般人にも難なく読み解ける、この上なく明快な論旨で文章を展開する。訳者の腕もあるのかもしれないが、その平易でありながら格調高い文体は、文章を書く時にはこのようでありたいという私の理想そのものだ。超一流の科学者が、一流の思想家であり、一流の文筆家でもあるという代表例といえるだろう。


ときにシュレーディンガーといえば、猫と一緒に引き合いに出されることが多いよね…。それは別に構わんのだが、猫を引き合いに出して並行宇宙の話を展開したり、ファインマンを引き合いに出して「相対論的宇宙観は既に過去のもの」とか言い出したり…そういうのはマジで勘弁して欲しいよ。


まずはさ、理論が適用される前提条件を理解してからな?